寄稿 震災の記録映画「生きる」 大川小学校の裁判を描く

74人の児童と10人の教職員が津波で亡くなった宮城県石巻市立大川小学校。
 「なぜわが子が学校で最期を迎えなければならなかったのか?」この映画は、10年間にわたりその答えを探し続けてきた親たちの記録映画です。
 地震が起きてからすぐに児童たちは校庭に避難。「先生、津波が来るから山に逃げよう」そう発言した子どももいましたが、教員たちによって津波で流されるまでの50分もの間、校庭での待機を強いられました。
 校庭のすぐ横には山があり、子どもたちはシイタケ栽培で登っていました。舗装された小道もあり、校庭からわずか1分で登れるこの山に避難していれば、全員が助かったのです。 「なぜ山に逃げなかったのか?」という遺族の問いかけに対し、石巻市は「木が倒れてきた」や「地割れがした」などとデタラメな答弁を連発。さらに、当時の石巻市長は「これが自然災害における宿命だ」と、言い放ちました。
 一部の親たちは、真実を求めて宮城県と石巻市を提訴。裁判は最高裁まで争われましたが、最高裁は石巻市の上告を棄却。仙台高裁の「震災前の学校の防災体制に不備があったとして、市と県に約14億3600万円の支払いを命じた判決」が確定しました。裁判官は「学校が子どもの命の最後の場所になってはならない」と、学校側の責任を断じていま小の校長が「津波を想定した避難訓練を実施していなかった」にもかかわらず、「実施済」と教育委員会に毎年ウソの報告を繰り返していたことも暴露されました。
 私は現地でご遺族の方から直接お話を聞いたことがあります。あるご遺族が、「管理職にしてはいけない先生を管理職にしてしまったから、こどもたちの命が守れなかったんだ。学校の先生は、『そこにたまたまいた大人』じゃないんだよ。」と話された言葉が忘れられません。
 一方、学校管理下の子どもの命を100%守った岩手県釡石市の防災教育は、「釡石の奇跡」として賞賛されています。(片田敏孝著『人が死なない防災』集英社新書 参照)
 この大きな違いはどこにあるのか、ぜひこの映画をご覧いただきたいと思います。【さいたま市防災アドバイザー・加倉井誠】

映画『生きる大川小学校津波裁判を闘った人たち』
上映日程田端シネマ・チュプキ・タバタ5月18日(木)~30日(火)
東中野 ポレポレ東中野 5月13日(土)~6月2日(金)
熊谷 イオンシネマ熊谷6月2日(金)~8日(木)

関連記事

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

インフォメーション

  1. 2024-9-13

    食生活の改善で健康寿命を延ばそう ②

    バランスの良い食事をするためのポイント 主食、主菜、副菜をバランスよく組み合わせる 1日に3食、…
  2. 2024-9-13

    見捨てられた能登

     お盆に能登半島の東端にある珠洲市を再訪しました。  元旦の津波で壊された家がそのまま放置されてお…
  3. 2024-9-13

    柏崎小学校PTA会長としての想い⑥

     柏崎小学校スクールサポートネットワーク主催「柏崎小学校校庭整備活動(草取り、ごみ処分、簡単な樹木剪…

『らうんじ』からの募集・告知

  1.  岩槻駅西口に「チャンリー」という隠れ家的なしゃれたカフェ併設のセレクトショップがあります。 そこ…
  2.  岩槻郷土資料館では、九月二六日(木)~一〇月二〇日(日)まで、「新収蔵品展」を開催します。 ここ…
  3.  今年の岩槻まつりでは、人形行列・黒奴行列への参加、岩槻の和菓子店とコラボして商品開発及び販売、会場…
  4.  今回は番外編としまして、この秋の重大なイベント大遠征二件についてお伝えさせていただきます。 これ…
  5. 10月19日武州鉄道開業100周年記念イベント開催 こんにちは。 今回はまぼろしの鉄道「武州鉄…
無料イラスト素材【イラストAC】

岩槻について

  1. 来年でとうとう戦後80年。  たくさんの問題や課題が起こる中、大人たちは子供たちに特撮ヒーロー番組…
  2. 「距離感について」 学童で働いていた私が子供との関りを綴る日々の記録です。 学童では小学1年生か…
  3. 「届く思い 残る思い」 会いたい人がいる 幸せを願う人がいる 他の誰かではなく…
  4. 「空」  今回は空色についてお届けします。かの清少納言の枕草子では春はあけぼの、夏は夜、冬はつとめ…

アーカイブ

過去記事

イベント終了などで移動になった記事はこちらから

移動済み情報記事一覧へ

 

ページ上部へ戻る