寄稿 注意欠陥多動性障害 生きやすくなるために

 前回は知的障害をご紹介しました。あくまでも参考として、純粋に「知的障害だけであるならば」という限定条件での説明でした。それだけ複雑かつ多様な障害があるためです。例えば注意欠陥障害、多動性障害、広汎性発達障害などという言葉もあります。

 戦後の日本は「埋めよ! 増やせよ!」で十人兄弟という家も少なくありませんでした。しかし今は、核家族も多いです。ということは、多くのお母さんが赤ちゃんを見るのが初めてということになりますね? はじめての子育てはどんなに大変なことでしょう。授乳からオムツ交換から沐浴から体調確認…。世代間ギャップはこの分野に関して特に大きいと私は思います。

 1人のお母さんが十人もの子供を産んで育てていた時代、離乳食をその子のためだけに大人の食べるものと別に作るなんてできませんでした。だから、自分たちが食べているものを口で咀嚼して、柔らかくしたものを吐き戻して食べさせることが普通に行われていたはずです。今のお母さんが聞いたら顔をしかめるだろうと思います。

 昔のお母さんたちは、今はおばあちゃん。いや、ひいおばあちゃんでしょうか。戦後の物の無い時代に、多くの子供を育て上げてきた肝っ玉母ちゃんの経験に学ぶことは多いものの、衛生観念や疾病の変化など時代が進んでくるにつれ変わりつつあり、お母さんは今の教育を受けますから昔のお母さんとベースが違うのだと私は思っています。

 注意欠陥多動性障害という言葉が世に出てきたのは1987年です。昔のお母さんたちは言葉すらなかったので、知らなくて当然です。。落ち着きがなく、忘れ物が多く、授業中もずっと座っていられない…。そんな子がクラスに1〜2名はいませんでしたか? 黒柳徹子さんが、そんなお子さんだったことは有名ですね。

 親の育て方が悪いとか、その子の努力が足りないとか、非難を受けてしまった暗黒の時代もあったようです。親の子育てが悪いから発達障害になることはないと、厚生労働省の説明にあります。本人にも親御さんにもどうしようもない何らかの原因があるため、集中したり、落ち着いて行動するということがしづらい特徴を持つヒトがいると分かってきたので、注意欠陥多動性障害という名称がつけられてきたのです。

 でも、どうでしょう? 黒柳さんは素敵な大人ではありませんか? 注集中ができなくたって、物怖じせずあらゆるものにチャレンジできるパワーは彼女の優れた面です。誰しも障害だけを持っているわけではなく、他の人よりすぐれた別の面も持っています。分からないと歩み寄れませんが、どういうことなのか知る人が増えれば、多くの人が生きやすくなるはずです。【愛風・久毛】

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