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防災の講演をすると、「私はもう年なんで、何かあったらあきらめます。特に備えはしません」という高齢の方がめずらしくありません。
それに対して私は、「あなたがもし災害で亡くなったら、あなたを捜索したり救出したりする人たちがいるんですよ。
あなたが亡くなったことに対して、自分を責めるご家族もいるでしょう。
そんな人たちに迷惑をかけると思いませんか。」と言います。
災害のない平時でも、日本では年間に3万人もが孤独死するといわれています。
日本少額短期保険協会の第5回孤独死現状レポートによると、孤独死者の平均年齢は男女ともに約61歳。
平均寿命と比較し20歳以上も若くして亡くなっているのです。
孤独死は、誰の身に突然起きても不思議ではないのです。
如月サラさんの著書『父がひとりで死んでいた 離れて暮らす親のために今できること』(日経BP)は、遠く離れて暮らす父親が孤独死していたという体験をエッセイストの著者が詳細に綴っており、話題となりました。
まず、遠く離れた九州の実家に住む母親が熱中症で倒れます。
それをきっかけに母親の認知症が判明し、認知症の専門病院に入院。
それ以降、父親の一人暮らしが始まるのですが、母親の入院をめぐって父親と意見が対立し、疎遠となってしまいます。
そして、ある日何度電話しても父親が出ないことから、父親の孤独死が判明するのです。
孤独死は不審死に該当するため、警察の現場検証が行われ、遺体の司法解剖へと進みます。
ようやく葬儀と納骨が終わり一人になると、著者は涙が止まらなくなったと語ります。
息つく暇もなく、今度は父親がしていたあらゆる契約の解約に奔走し、最後に相続の手続きが待っていました。
ところが相続人の一人である母親は認知症。
さらに実家には猫が4匹もおり、やっと探し当てた「老猫ホーム」の金額の高さに著者は仰天します。
平時の孤独死でもこれだけ大変なのですから、災害時に孤独死が起きればどうなるかは想像もできません。
東日本大震災の後では、家族を亡くして一人になってしまった方の孤独死が続いたと聞きました。
プレハブの仮設住宅では、隣の家のテレビの音まで聞こえて異変にすぐに気がつけたのに、立派なコンクリートの復興住宅では防音もしっかりしていて、孤独死に全く気がつかなかったケースが多いそうです。
大変な思いをした著者を助けてくれたのは、ふるさとの友人たちでした。
最後に著者からみなさんへ。
「あなたが今、どういう境遇にあるか私にはわかりませんが、この本が少しでも心を軽くする友達のような役目を果たせますように、そしてあなたのあしたを幸せな方向に変えるきっかけになれますように。心から、ありがとうございます」。
【さいたま市防災アドバイザー 加倉井誠】
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