戦争の記憶 が残る貴重な 「いろは歌留多」 ⑤

 藤川公成氏がシベリア抑留の様子を『いろは加留多』として、昭和55年1月に記した、新旧2本を同じ頭文字のカルタを新(カラー)、旧(白黒)の対比した形で連載しています。
紙面掲載への経緯は弊紙654と655号で既に掲載されていますので割愛します。

【わ】
若い命がきえてゆく
- 思えば若い戦友は二十歳であった。私のような五月招集の老頭児(ろうとる)兵は彼等の弟分であった。
しかし生きる心のゆとりは私達の方が兄分だった。
若さを誇る体力をセーブする事を知らず、多くの若者が枯れ木となって朽ちた。
この真面目な兵は上司の飯盒を洗うのに水が無く。せめて雪でも内部柵の吹き溜まりに近づき望楼上から射殺された。
理由の如何を問わず、柵に近づけば射殺と通達されていたが、まさかの凶事であった。

【か】

カンテラ命の構内作業
- ここが金山の町とは誰も知らず、収容上からの遠望では何か小工場があるな、と思った程度であった。
抑留と労働が一体とも考えなかった。共産主義国は弱者の見方と信じたかった。
農作物の獲り入れ作業中に、金山労働の具体化が行われ、三三九工兵隊の内園中隊は坑木用伐採に派遣された。
金山労働がどんなものかの事前教育、訓練も無く選ばれた坑内作業者は地下三千尺に下降していった。
農民の多かった兵はもぐらとなって生きた。

【よ】

よろめきO・K耐え忍び
- これは森林の図ではない。間口五間、奥行四間、深さ二間位に掘られた野外W・Cの糞尿塔群である。穴にわたされた二本の丸太橋だが、習性で同じ場所を使用するため、氷の塔が出現する。これの除去作業はO・K病弱隊の任務。鉄棒で根元を叩き折り担ぎ上げ所外の捨て場に運ぶ。私もやったが不潔感はなかった。氷塔には不消化な大豆粒などが氷花の様に見えた。こっそりと素手で温めて取りのぞく兵もいたが、誰もとがめない。

新版文字起こし「わ」「か」「よ」

【わ】

わからぬ言葉で
通訳顔負け

それはまことに見事なものであった。遠方から見ていると一流の通訳ではないかと思われるほど、和気あいあいと商談を実らせる。
あんな男がと首をかしげる人物がことミニャーチに関しては、わが即製通訳殿の遠く及ばぬ実績であった。
彼は戦友の委託品取扱い業で結構な生活をしていた。

 

 

 

【か】

噛みつきそうな
ナチャーリニク
ノルマという怪物がソ連の進歩をはばんでいる、と私は今でも思っている。縦の線につながる組織のどの部分も、このノルマに生活と生命がかかっている。
その部分々々でノルマの水増し報告がなされている。
未端のナチャーリニクが鬼になるのは、無責任の責任のためで隣れでさえある。

 

 

 

 

【よ】

よい男パタパタ
パタと営内靴
炊事並のポス平山一郎堀長は忘れられない好人物だった。
昭和五十年九月に亡くなっておられ、遠に再会出来なかった。
氏が舎内を歩くとパタパタパタと、営内靴の音が派手に響く。
「人間には出来心がある。
食機に手を出すな、悪いことはするな、という危険信号だ。集団生活の鉄則だよ」

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