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ペットの野良猫、モンタ物語「僕は捨て猫、モンタです」第49回(最終話)
ペンネーム キカン坊
座布団の上で寝ている様に見えたトラ模様のネコに声をかけても全然動きません。
無精ひげのおじさんはそっと近づいて触ってみて、そのネコはすでに死んでいる事を知りました。
猫の寝顔は何とも幸せそに少し笑っているようにさえ見えました。
その部屋の横の壁には久子ちゃんからモンタに書いた手紙が貼ってあります。
無精ひげのおじさんはそれに気付いて黙って読んでいました。
ちょっと鼻をこすりながら「そうか、おまえモンタって言うんだ、良い名前だな。今までご苦労さんだったね、ゆっくり休みな」両手でやさしく座布団と一緒にモンタを持ち上げ、ゆっくりと外に出ました。
敷地の隅に植えてある梅の木の下に行って作業員に声を掛け、根元に大きな穴を掘らせ平らにさせました。
座布団に寝たままのモンタを穴の底にそっと置き、壁に貼ってあった久子ちゃんからの手紙を持ってこさせて、寝ているモンタの上に掛けてあげました。
それからゆっくり土を被せ、埋め終わって少し盛り上がった所の真ん中に、丁度モンタの大きさ位の庭に有った石を探して来て置いてあげました。
「あの梅の木は切らないで残すからな、忘れんなよ。」無精ひげのおじさんは、作業員に大きい声で言いました。
久子ちゃんと楽しく過ごした思い出の家は、5日で解体されて平らに整地された敷地の隅には、梅の木一本だけが残されていました。
大好きな久子ちゃんの匂いがいっぱい染み込んでいる座布団に寝て、久子ちゃんからの思いのこもった手紙に包まれ土の中に入ったモンタは、冬眠動物が次の春を待つための眠りについたような、しかし目を覚ますことのない永遠の深い眠りについたのです。
きっと、久子ちゃんとの初めての出会いや、ひとり残されて頑張ってきた日々、おもしろいおっちゃんや、やさしいおばちゃんとのこと、近所のオス猫とのケンカで怪我したことや久子ちゃんが逢いに来てくれた事など、永遠の眠り中できっと思い出していることでしょう。
チチチィ、チチチィ、小鳥が飛んできました。
小鳥が止まった梅の木は、 葉っぱをすっかり落とし、春の準備をしています。
枝のつぼみも確実に大きくなってきています。
梅の木の根元には猫の大きさくらいの石が置いてあり、その廻りにはスイセンの芽が土から顔を出しています。
春になれば廻りは花でいっぱいになる事でしょう。
平らにされた敷地には、その後すぐにかわいい 家が建ちました。
梅の木の位置からは、朝日が当たる南側の窓を通して部屋の中の様子が良く見えます。
家の中では、小さな女の子とモンタに似た子猫が楽しそうに遊んでいます。
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