寄稿 「風魔の館」が岩槻にあった③ 黒谷の風間出羽守

 『後北条氏家臣団人名辞典』にある「ふうま(風間) 北条氏に仕えた忍者の棟梁。
埼玉県さいたま市区黒谷の妙円寺の開基は風間出羽守の嫡子雨宮主水正と伝える」という記事の出典は、版元を通じて著者の下山治久さんにお尋ねしたところ、『岩槻市史 通史編』でした。
 同書782頁には、黒谷の妙円寺について「開基は、風間出羽守の嫡子雨宮主水正で、開山は黒浜真浄寺第三世・雪庭祖林和尚である」と記してあります。しかし、この記事も出典
不明です。
 そこで別に「風間出羽守」をグーグル・ブックス検索してみると、『岩槻市史 近世史料4(2)地方史料(下)』がヒットしました。同書所収の、安政二年(1855)から黒谷村の名主家・雨宮弥太夫家で書き継がれた備忘録『万代記録帳』(杉崎賢治家文書)に、「風間出羽守」の名が記されていたのです。
 『万代記録帳』は、翻刻が100頁以上に及ぶ大部な家記です。同書958頁の「当家歴代控」には、「風間出羽守嫡子雨宮主水正〔本国紀州清和源氏頼義拾八代之後胤 風間出羽守〕」とありました。また同書975頁以下の「菩提所付届控」に、毎年お盆とお正月に付け届け(贈り物)をする4つの寺院の名が挙げてあり、このうち黒谷の妙円寺は、先祖が開基したので前々から付け届けをしている、と注記されていました。
 『岩槻市史 通史編』の妙円寺の開基に関する記事は、この2つの情報を合成して出来ている、と推測できます。
 『万代記録帳』によると、風間出羽守は、紀州が本国で、清和源氏を名乗り、子孫の雨宮氏は江戸時代、黒谷村の名主家になっていました。
 さてしかし、同書にも、風間出羽守自身が何をした人なのか、直截には記されていませんでした。そのため、それは、後北条氏の発給文書や『万代記録帳』などを手掛かりに推測していくことになります。
〈次号に続く〉【岩槻風魔忍び研究会・吉田】
黒谷・遍照院の共同墓地の杉崎家の墓所にある、風間出羽守の子孫・雨宮弥太夫家の累代の墓碑(中央より右、2022 / 6)

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