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岩槻区の北部にある慈恩寺は平安時代に開山された寺である。徳川の時代には、寺領百石の御朱印寺だった。また、坂東観音札所十二番目の寺で、私が訪れた10月の初旬にも奉納帳を持った千葉県からの参拝客があった。「ぎんなん、ご自由にお持ちください」境内のイチョウの木の張り紙に思わず笑みがこぼれた。ここでは毎年、菊の展示も行われ楽しみにしている方も多い。(平成29年は11月の初めから11月23日まで)玄奘塔へは寺の前から参道が続いている。
玄奘塔は西遊記で名高い三蔵法師の霊骨石塔である。参道の途中、苅田を隔てた丘の上、塔の先端がこんもりした繁みの中に頭をのぞかせていた。案内板によると、「第2次大戦中、南京で発見された霊骨は分骨され、日本に渡った。紆余曲折を経て法師有縁のこの地に、昭和25年十三重の塔を建立した」とある。境内に入ると静かな聖域が広がっていた。
ヒマラヤスギや大王松の大木が大きな木陰を作り、あちこちに萩が群生している。ここを管理している人の話では「少し前には彼岸花がみごとでした。夏は蛍の観賞会もします。手入れするのに農薬を使わずにいるので、虫もたくさんいますし、それを目当てに野鳥も来ます。先日バッサバッサと大きな羽音がするので外へ出たら雉のつがいが飛んでいました」 帰り道、農道で雉にばったり出くわした。色鮮やかなオスであった。
ここでの行事、玄奘忌(2月5日)は日没にかけて塔のまわりを廻る“歩く禅”が幻想的だという。玄奘祭(5月5日)は稚児行列があるという。 (第7回)
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