寄稿 岩 槻 郷 土 資 料 館 だ よ り  70

「石鏃(やじり)」

石鏃は弓矢の「やじり」として使われたと考えられる石器で、狩猟をするための道具の一つとなっています。縄文時代の初め頃から、それまで使われていた槍に代って使われ始めたようです。それは、氷河期にみられたナウマンゾウ、オオツノジカ、ヘラジカなどといった大型の動物が気候の温暖化に伴って、姿を消していき、イノシシやシカといった動物へと狩猟の対象が変わってきたことによるものといわれています。
 さいたま市内の真福寺貝塚、黒谷田端前遺跡(岩槻区)、馬場小室山遺跡(緑区)などの遺跡からたくさんの石鏃がみつかっています。石材は、黒曜石やチャートといった鋭く割れるものが用いられています。大きさはおよそ二〜三㎝程のものが多く、形は三角形のもの、基部に抉りをもつもの、基部に茎をもつものなど様々なものがみられます。
 一般に遺跡からみつかる石鏃はそのものだけで、柄のついた状態でみつかることはほとんどありません。そのため、石鏃がどのように柄につけられていたかはあまりはっきりとしていませんが、寿能泥炭層遺跡(大宮区)からは、全国的にも例の少ない、柄の一部がついた状態のチャート製の石鏃がみつかっています。また、南鴻沼遺跡(中央区)でも柄の一部がついた状態の石鏃が二点、みつかりました。この二点の石鏃はいずれもチャート製のもので、柄につけた部分にウルシが用いられており、接着剤として使われていたことがわかりました。さらにこのウルシの成分を分析したところ、「セルスキテルペン類」と呼ばれる、天然の植物中の精油成分に含まれているものがみつかりました。これは、縄文時代の人々が、接着剤とし
て用いたウルシを、滑らかに使いやすくするために混ぜた可能性も考えられるものです。縄文人の工夫がうかがえ、石鏃を柄につける様子を知る一つの資料となりました。

 石鏃は縄文時代だけでなく、弥生時代にも使われていたようで、類似する石鏃がさいたま市内の遺跡からもわずかですが、みつかっています。

郷土資料館展示石鏃です

 

関連記事

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

CAPTCHA


インフォメーション

  1. 2024-4-12

    断念…地下鉄7号線の岩槻延伸、年度内は申請できず さいたま市議会

  2. 2024-4-12

    睡眠不足がもたらす健康リスクとは?③

    睡眠の質を高めるための方法 ・睡眠スケジュールを作成する際には、週末も同じ時間に起きるように心がけ…
  3. 2024-4-12

    「まちあわせ」

     まちづくりユニット「まちあわせ」が岩槻のさまざまなまちづくりを紹介するこのページ。 今回は3月…

『らうんじ』からの募集・告知

  1. [caption id="attachment_21730" align="alignright" …
  2. [caption id="attachment_21722" align="alignright" …
  3. 白いひげをたくわえた老人がホールで交響楽を聴いている。 ピアノを流暢に弾く青年を口元に指を当て凝視…
  4. おおよその面積を求める問題 左の図は、見慣れた岩槻区の地図です。これを見て中学生のA君とB君が以下…

岩槻について

  1. 2024/4/12

    端午の節句
    五月人形 コンパクト おしゃれ 伊達政宗 上杉謙信 兜飾り 兜ケース飾り ア…
  2. イベント情報

    2024/4/12

    手作り展開催
    体験コーナーもお楽しみに… 【日時】4月26日(金)10時〜17時 【会場】人形博物館併設 にぎ…
  3. イベント情報
    いつまでも完気で去ける身体目指しませんか? 【講師】大谷友帯(歩きち&姿勢の体験会) 【日時】4…

アーカイブ

過去記事

イベント終了などで移動になった記事はこちらから

移動済み情報記事一覧へ

 

ページ上部へ戻る