犬の話〜最終回〜 「犬を見つけた」

次の一手を打たなければと犬を里子に登録し、里親を募集したらなんとたった数日で引き取りたいという人が現れるのだから、最初からこうすればよかった、と私は思った。
妹は両手を合わせて謝り、言い出した自分がビラを作るくらいしか役になってなかったことを気にしていた。
「まぁ、でも見つかったし」と落ち込む妹を励まし、「これですべて解決したね」と泣き崩れそうな雰囲気の母親に悪いな、と思いながら、私は胸をなでおろしていた。
犬を見送るのは思ったより私の中でさっぱりしていて、巣立つ鳥を見送る母鳥のような心境だった。
達者でな、と言いたくなる。
しかし、その里親から母親に電話があったのはその2日後で、どうにも相性が悪く、言い聞かせたことを全く聞かず、しまいには手を噛んでしまったのが決定的で、私が数日後に実家に行くと何事もなかったかのように犬がいた。
「え、なんで?」「どういうこと?」と混乱して自分だけが数週間ほど戻ってしまったのかとカレンダーの日付けを何度も確認する私に母親が嬉々として「うちで預かるわ、この子」と、言った。
「あ、そういうこと」と安心して私が経緯を聞くとそういうことで、私の達成感は2日しかもたなかったのかと、気を落としながら、でも幸せそうな母親と犬を見て、この絆を生んだのもまた、探し回った二週間だったのだと思い、「いい家が見つかってよかったな」と犬の頭をなでた。
【大野弘紀】

関連記事

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

CAPTCHA


インフォメーション

  1. 2017-11-10

    PCサポート倶楽部

『らうんじ』からの募集・告知

  1. 健康づくりと仲間づくり 健康づくりには歩くことが一番です。あなたの時間…
  2. お問合せは下記連絡先まで。内容により掲載ができない場合もございますので、…
  3. 弊紙「らうんじ」では企業や団体、店舗などの広告掲載を随時受付けております…
  4. 岩槻の地域情報紙「らうんじ」では読者のみなさまからの投稿、記事に対するご…
  5. 地域情報紙「らうんじ」は、ポスティングにより各世帯へと配布しているほか、…

ピックアップ記事

  1. 夏の恒例行事「2018人形のまち岩槻まつり」が8月19日(日)に開催された。 そして「岩槻JAZZ…
  2. 市松人形
    市松人形 五節句の一つ「重陽の節句」をテーマとした様々なイベントが、NPO法人 岩槻・人形…
  3. 岩槻区尾ヶ崎の「光秀寺のカヤ」は、幹周り5・37mという岩槻区内最大の巨木です。 さいたま市の…
  4. 河合小学校近くにある平林寺赤坂沼を訪ねてみた。 今から650年ほど前の南北朝時代に、この近くの…

アーカイブ

過去記事

イベント終了などで移動になった記事はこちらから

移動済み情報記事一覧へ

 

ページ上部へ戻る