夏やすみがはじまったばかりの、あるあさのこと。
「台風、こわかったね」さやちゃんは、おとうとのたっちゃんにいいました。
「ぼく、ぜんぜん こわくなかったもんねー」

ふたりは台風でちらかった庭をかたづけています。
たっちゃんが、ゴミ袋を片手に、庭の おくからでてきていいました。
「ねえねえ、これなに?」たっちゃんの手のひらに、ちいさな丸いものがのっています。
さやちゃんは、よーく見ていいました。
「ビー玉かなあ。でも、まんなかに割れ目が あるみたい」
たっちゃんはその玉を、だいじそうにポケットにしまいました。

つぎの日、ふたりがだいすきなポテトチップスをたべていると、カタカタ……カタ……カタカタ……へんな音がします。それは、たっちゃんの宝もの箱からきこえてきます。
ふたをあけてみると、ビーのひとつがカツンカツンと、おはじきにあたっていました。きのう、たっちゃんがひろった玉です。その玉は、ひとりでピクピクと、うごいています。
ふたりはびっくりして、おかあさんをよびました。
「あらまあ! これは、なにかの卵かしら?」
おかあさんも目をまんまるにして、びっくりしています。
「わあ! なんの卵かな!」さやちゃんは、ワクワク!
「ミニミニきょうりゅうの卵じゃない?」たっちゃんは、ドキドキ!
ふたりはその“卵”を、大事そうに きれいなおかしの空き缶に うつしました。(つづく)

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